日いずる国の経 8

 

この記事について

2009年と2016年に著者が体験した中有(冥府)の世界での出来事。宇宙と子宮の神秘に隠された死と再生の体験を記していきます。09年、16年に私が観たこの2つのビジョンは異なった視点で表現されますが、それらは全く同質の事柄になります。この記録を通じて読者の方に何か伝わるものがあれば幸いです。

 

 

第五章

月下かみ相撲 
 
 その後しばらくの間、私は別室で留まっていましたが直ちに家を出るように促す声と張り詰めた状況は変わらないため、やむを得ず部屋から出て妻に家を出るように要求されていることを伝えると、その突然の出来事に彼女は下を向いて戸惑い、困惑しているようでした。
 
 そしてその力強い存在は、迫るように尚も続いて家を出るように促しますが、私はその内なる声の主に全身全霊で反発をし続けました。
 それはまさに全身全霊で反発しなくはならず、たとえそれが神や天子であっても、暗示された引き継ぐ型としても、そのとき私はそうする必要があったのです。
 
 内にこだます声は「世のために、あなたはこの家を直ちに出ていかなければならない」と続け、強く誘導されるかのように身体が玄関まで進んでいましたが、私は納得することが出来ず「世のためというのなら、この世の総ては一成るもので、一成るものはこの世の総てであることを私は神によって知ったのだから、この総ての中の一粒である自分の子をこんな形で突然おいていく事はできない」と強く訴え続けると、この切迫した力が次第に解けてけいきました。

 するとこの力ある主は、どうしてもこの家に残るのなら妻と対話しなくてはならないこと、そしてこれから私自身が、あの生命の呼吸を持つ期間に入っていくため、そのような者と共に過ごすと言うことは、彼女もまた同様に非常に重いものを持つ覚悟が必要となると言うことを自身を通じてその存在は妻に語りかけ、これに妻は承知しましたが、それはまさに契りのようなものだったのでした。

 



裏切りの思いの泡

 

 そして翌日も半身神憑りの状態が続いたのですが、私の内にあるその存在は昨晩の力強い表情とはうって変わり、静けさに包まれた無垢のような存在だったのです。
  
 私はこの静けさに包まれた主と共にある状態が数日続くにつれて、次第に恐れに似た感情を覚えはじめました。
 それはこの汚れ一つない清浄な存在と共にあり続けるうちに、私個人のもつ固有の気質が消滅していくのではないか、という予感と疑いとが表われてきていたのでした。
 その私の性質の消滅は、先の直ちに家族をおいて家を出て行く事と等しいように想えてしまったのです。

 この状態が数日間続き、声質や文字を書く感覚も普段とは少し違くなっていた私は、静けさに包まれた主と共にあることを終わらせたい、という想いが強くなってきていましたが、この存在は私のもとから離れていく気配も、その応答もありませんでした。

 そのため私は夜になると、この問題を解決しようと心に決めて、車でひとり川辺に向かい、そこで静けさを放つ存在と内なる対話をはじめました。
 そして私は、この存在との友好的な思いを伝えながらも密かに謀るようにして躊躇なく、思いによってこの存在を斬ったのです。

 この時、私はあの無垢で清らかな存在に自身が恐れを抱いていた為に、思いによって断ち切ったのですが、実際に斬られたのは、あの澄んだ静けさに包まれた主ではなく、私自身だったのではないかという戸惑いが起こり、あのとき現れた部屋の角、北東に映る高山の2人の聖人のビジョンがふと頭によぎったのでした。

 この時からその存在は私の内から消えたのですが、それから再び7年前に経験したような高ぶった感情が、徐々に湧き上がってくるように現れてきていることに気づき始めたのです。
 

 

 

時間の辻褄

 

 内なる神が私の目前に現れてから六日後の夜、私はこのような異常ともいえる状態であることは理解はしていましたが、仕事を休むことはせずに夜勤介護の仕事に向かいました。
 夜間勤務は一人業務であるために少々の懸念はありましたが、心の高ぶりを注視し、無事に何事もなく朝を迎えて仕事を終えようとしていました。
 私は業務終了前の早番職員への申し送り事項を伝える為にメモを取っていたのですがその最中、自身の異変に気が付いたのでした。 
 
 それはメモを取っていると突然、意識が点の中で留まって動けないようになり、過去と未来という因果が寸断されたように時の運動が起こらず辻褄が合わず、全く次の思考が起こせないのです。

 以前「間」を観る事に集中して観相していた、思考を起こさない、と言う努めの様なものとは違い、思考が起こらない、というよりこの時の私は起こせないのです。
 それはあまりに強かったので申し送りのメモを取るのにペンも進まず、思考も所々寸断されて時間が掛かってしまいましたが、何とか仕事を終えて家に向かうことが出来ました。

 車に乗り、少し落ち着いてから慎重に運転を始めてしばらくすると、下腹部がブルブルと震え出し、太鼓を打つような音が微妙なタイミングでタ・タ・タ・タ・タ・・と静かに聞こえ始めてきたので、これからまた何かが起こることが予感され、途中休み休み車を止めてゆっくり家に向かいました。

 そして家の近くまで来たときに下腹部、丹田に7年前よりさらに巨大な、これはもう蛇ではなくグルグルと渦まく巨大な龍が凄んでいるのを感じられ、私の身体が丹田を発震源として震えが徐々に大きくなってきているのに危機感を感じ、家の手前で車を止めて様子をみることにしました。

 もうこの異常な出来事、切迫だとか緊迫だとかもうそんなことが続きすぎていて、よくわからなくなってきていましたが、何とか落ち着かせようと車内に留まり、30分程してから下腹部の落ち着いてきたので家に向かったのです。

 

                             つづく

 

 

 

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